心の金継ぎ師・Morleyです。
何気ない日常の中で、思わぬすれ違いに出くわすこと、ありますよね。

 

 

先日、父の付き添いで訪れた病院での出来事です。
処置室から「もういい!帰る!」と大声で出ていくおじいちゃん。その後を追いかけるように若い医師。そして、傍らの男性が思わず声をかける。「あんな言い方じゃ怒りますよ!」
やりとりを聞いていると、医師は「同じ説明を繰り返しても理解してもらえなかった」とこぼし、傍らの男性は「それでも言い方ってあるでしょう」と諭している様子。

 

まさに、お互いの善意が、すれ違いの中で空回りしてしまった瞬間でした。

 

アドラー心理学で見る「すれ違い」

アドラー心理学では、すべての問題は「対人関係」にあると考えます。この場面でも、誰かが悪いわけではなく、それぞれが「自分の目的」に向かって行動していたと考えると見え方も違ってきます。

*医師は「患者を理解させたい、治療を前に進めたい」という目的。

*おじいちゃんは「自分を理解してほしい、安全に感じたい」という目的。

 

しかし、その「目的」がかみ合わないまま、お互いが“自分の正しさ”を軸にして行動したため、ズレが生じたのではないかなと考えました。

 

ズレは「悪意」ではなく「認知の違い」

おじいちゃんが怒ったのは、きっと「頭ごなしに言われた」と感じたから。医師が強く出たのは、「何度も説明しても通じない」ことへの焦りからだったかもしれません。

 

アドラー心理学では、人はそれぞれ“主観的な意味づけ”で世界を見ていると考えます。つまり、相手の感じ方は自分の意図とは関係なく決まるということ。

 

「わかってほしい」「良かれと思って言っている」──
それが届かないとき、私たちはつい語気が強くなったり、あきらめてしまったりする。でも、それは「相手の目的」を見失ってしまっている状態なのかもしれません。決して人ごとじゃなく、自分でも他者とのやり取りでイラッとした時、自分に都合のいい主観的な世界で見ていると反省しました。

 

「違いを超えて、寄り添う」

医師が最後に頭を下げて歩いていった姿。それは、「正しさ」を一旦脇に置いて、「関係性」を選んだ瞬間だったように見えました。

 

アドラー心理学での良い関係性とは、人間関係で最も大切なのは「横の関係」、すなわち対等な関係です。

医師と患者、年齢差や知識差があっても、「あなたの気持ちを大切にします」という姿勢が、信頼の第一歩となります。

 

すれ違いが教えてくれること

ほんの小さなボタンのかけ違いでも、立場や目的の違いがズレを生みます。でも、そのズレに気づき、もう一度「関係性を整えよう」とすることで、人はつながり直すことができるんですね。

「わかってもらえない」と嘆く前に、「相手はどんな目的でそこにいるのか?」そう問い直してみること。
それが、アドラー心理学的な“寄り添い”の一歩かもしれません。

 

日々是アドラーです。
Moriyでした。