伝説のスピーチ

2007.06.17

―――こんにちは、セヴィアン・スズキです。ECO(エコ)を代表してお話しします。

ECOというのは、子供環境運動(エンヴァイロンメンタル・チルドレンズ・オーガニゼェーション)の略です。

カナダの12歳から13歳の子どもたちの集まりで、今の世界を変えるために頑張っています。あなたがた大人たちにも、ぜひ生き方を変えて頂くようお願いするために、自分たちで費用を貯めて、カナダからブラジルまで1万キロの旅をして来ました。

今日の私の話には、ウラもオモテもありません。
なぜって、私が環境運動をしているのは、私自身の未来のため。自分の未来を失うことは、選挙で負けたり、株で損したりするのとはわけが違うんですから。

私がここに立って話をしているのは、未来に生きる子どもたちの為です。世界中の飢えに苦しむ子どもたちの為です。

そして、もう行く所もなく、死に絶えようとしている無数の動物たちの為です。

太陽のもとに出るのが、私は怖い…。オゾン層に穴が開いたから。呼吸をすることさえ怖い。空気にどんな毒が入っているかもしれないから。父とよく、バンクーバーで釣りをしたものです。数年前に、体中ガンでおかされた魚に出会うまで。

そして今、動物や植物たちが毎日のように絶滅していくのを、私たちは耳にします。それらは、もう永遠にもどってはこないんです!

私の世代には、夢があります。

いつか野生の動物たちの群れや、たくさんの鳥や蝶が舞うジャングルを見る事です。でも、私の子どもたちの世代は、もうそんな夢を持つ事も出来なくなるのではないか? あなた方は、私ぐらいの歳の時に、そんなことを心配した事がありますか?こんな大変な事が、ものすごい勢いで起こっているのに、
私たち人間ときたら、まるでまだまだ、余裕があるような、のんきな顔をしています。
まだ子どもの私には、この危機を救うのに何をしたらいいのか、はっきり解りません。

でも、あなた方、大人にも知ってほしいんです。

あなた方も良い解決法なんて持っていないっていう事を。

オゾン層に開いた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう?
死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、あなたは知らないでしょう?
絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、あなたは知らないでしょう?
そして、今や砂漠となってしまった場所にどうやって森を蘇させるのか
あなたは知らないでしょう?
どうやって直すのか解らないものを、壊し続けるのはもうやめてください!

ここでは、あなた方は政府とか企業とか団体とかの代表でしょう。あるいは、報道関係者か政治家かもしれない。

でも本当は、あなた方も誰かの母親であり、父親であり、姉妹であり、兄弟であり、叔母であり、叔父なんです。そしてあなた方の誰もが、誰かの子どもなんです。

私はまだ子どもですが、ここにいる私たちみんなが同じ大きな家族の一員であることを知っています。そうです50億(現在60億)以上の人間からなる大家族。
いいえ、実は3千万種類の生物からなる大家族です。

国境や各国の政府がどんなに私たちを分けへだてようとしても、この事は変えようがありません。
私は子どもですが、みんながこの大家族の一員であり、ひとつの目標に向けて心を1つにして、行動しなければならないことを知っています。

私は怒っています!
でも、自分を見失ってはいません。私は恐い。
でも、自分の気持ちを世界中に伝えることを、私は恐れません。

それでも物を浪費し続ける北の国々は、南の国々と富を分かちあおうとはしません。物があり余っているのに、私たちは自分の富を、そのほんの少しでも手放すのが怖いんです。 カナダの私たちは、十分な食物と水と住まいを持つ恵まれた生活をしています。時計、自転車、コンピューター、テレビ、私たちの持っているものを数えあげたら何日もかかることでしょう。

2日前、ここブラジルで、家のないストリートチルドレンと出会い、私たちはショックを受けました。1人の子どもが私たちにこう言いました。

「ぼくが金持ちだったらなぁ。もしそうなら、家のない子すべてに、食べ物と、着る物と、薬と、住む場所と、やさしさと愛情をあげるのに。」

家も何も無い1人の子どもが、分かちあうことを考えているというのに、すべてを持っている私たちがこんなに欲が深いのは、いったいどうしてなんでしょう。

これらの恵まれない子どもたちが、私と同じぐらいの年だということが、私の頭を離れません。どこに産まれついたかによって、こんなにも人生が違ってしまう。私がリオの貧民窟に住む子どものひとりだったかもしれないんです。ソマリアの飢えた子どもだったかも、中東の戦争で犠牲になるか、インドでこじきを
してたかもしれないんです。

もし戦争の為に使われているお金を全部、貧しさと環境問題を解決する為に使えばこの地球は、すばらしい星になるでしょう。私はまだ子どもだけど、このことを知っています。

学校で、いや、幼稚園でさえ、あなた方、大人は私たちに、世の中でどうふるまうかを教えてくれます。たとえば、

争いをしないこと
話しあいで解決すること
他人を尊重すること
ちらかしたら自分でかたずけること
ほかの生き物をむやみに傷つけないこと
分かちあうこと
そして欲ばらないこと

ならば何故、あなた方は、私たちにするなという事をしているんですか?

何故、あなた方がこうした会議に出席しているのか、どうか忘れないでください。
そしていったい誰のためにやっているのか。

それはあなた方の子ども、つまり私たちのためです!

あなた方はこうした会議で、私たちがどんな世界に育ち生きていくのかを決めているんです!

親たちはよく「大丈夫。すべてうまくいくよ」といって子供たちを慰めるものです。

あるいは、「出来るだけの事はしてるから」とか、
「この世の終わりじゃあるまいし」とか。

しかし大人たちは、もうこんな慰めの言葉さえ使うことが出来なくなっているようです。お聞きしますが、私たち子どもの未来を真剣に考えたことがありますか?

父はいつも私に不言実行、つまり、何を言うかではなく、何をするかでその人の値打ちが決まる、といいます。

しかし、あなた方、大人がやっていることのせいで、私たちは泣いています。あなた方は、いつも私たちを愛しているといいます。

しかし、私は言わせてもらいたい!

もしその言葉が本当なら、どうか、本当だということを行動で示してください!!

最後まで私の話を聞いてくださってありがとうございました。

12歳の少女、セヴィアンのスピーチが終わるや否や、会場は大喝采の拍手に包まれた。

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<リオの伝説のスピーチ>

上文は1992年6月。ブラジル、リオ・デ・ジャネイロで環境と開発に関する国連会議(環境サミット)に集まった世界の指導者たちを前に、12歳の少女、セヴァン・スズキがスピーチしたものです。

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このスピーチを知ったとき、ひと言もありませんでした。 今からでも遅くはない…先ずは自分にできることから始めることにしました。

≪自分ひとりで石を持ち上げる気がなかったら、二人でも持ち上がらない≫